学園への入学

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学園への入学

「……はい?」 『だから、ご主人からの命令で(えい)がお兄様と同じ学園に入学して護衛をしろと。』 「…正気ですか?ついにあのヒト、衰えでマトモに頭使えなくなったんです?」 『俺にそんなこと言われたってねぇ…。ま、入学試験は今日だからチャッチャと終わらせてきてよ。受験番号は…』  そんな内容の電話が掛かってきたのは、1月のある日。早朝。一方的に掛かってきて、一方的に切られる。いつものことだが、今日は一段と酷かった。腸が煮えくり返るような気持ちを抑え、俺は渋々受験の準備を始めた。  俺の名前は成瀬影(なるせ えい)。14歳。諸事情で学校には通っていないが学年は一応中学3年。世の中の中学3年生たちが絶賛受験期なのを、大変そうだな〜、と他人事のように高みの見物をしていたツケが回ったのか、現在の俺は早朝から慌ただしく身支度をしている。  面倒な手続きはもう全て済ましたらしく、手続き内容(俺の設定)と共に、『面接内容の擦り合せだけよろしく〜』という雲よりも軽いメッセージが俺のスマホに送られてきた。思わずスマホを床に叩きつけたくなる衝動に駆られたが、辛うじて抑えて俺は家を出た。  俺の家はとあるマンションの8階にある。理由は向かいのマンションの部屋に家族が住んでいるから。「何か起こったときに駆けつけられるように」ということでこの部屋を与えられているが、結構楽で俺は気に入っている。  受験する高校は日本国内でトップクラスの偏差値を誇る男子校、凌明(りょうめい)学園。兄が志望していることは知っていたが、「この学園全寮制だけど、俺はどーなるんだろ。…ま、上がどうにかするだろ。」くらいにしか考えてなかった。  くっそ、こんなことになるならもっと真面目に調べとくんだった。  そう後悔しながらも俺は案外冷静だった。なぜなら今日は筆記試験。面接は明日。今まで兄が学校で授業を受けているときは、俺も暇つぶしに兄に仕掛けた盗聴&盗撮機能搭載のペンから授業受けてたし。俺の頭は血の影響か要領は良いみたいだし、筆記試験くらいなら余裕だ。面接内容については帰ってから考えよう。  俺は帰ってからの具体的な予定を立てながら電車に揺られ、凌明学園に向かった。
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