学園への入学

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 そんな慌ただしく受験に向かっていた朝から約半月後。やっと合格発表の日がやってきた。筆記試験は思っていた通りかなり余裕だったし、面接も家に帰ってからいろんなパターンに対する回答を暗記して臨んだので楽勝だった。  これは合格しただろ、と思っていたが、いざ結果を発表となるとやはり少し緊張する。普通は担任などから合否が伝えられるらしいが、俺にはそんなものは存在しないので代わりの人間が電話をしてくることになっている。  だが何故かその代わりの人間からの着信がない。予定の時間からもう3時間は経っている。一体何なんだと思っていたところで、滅多に鳴らないこの家のチャイムが鳴った。  俺は警戒しながらエントランスにあるカメラに映った人間をモニター越しに見て、思わずため息をついてしまった。 「電話って言ってましたよね。」 『いや~、やっぱ直接伝えようと思ってさ。ほーら、開けて♡』 「……警察呼びますよ。」 『呼べるもんなら呼べばいーじゃん?俺は構わないよ?俺は影と違って証拠とか残さないしー?』 「……。」 『あー、でも、もしかしたら影が今までやってきたこと、うっかり喋っちゃうかもなー。』 「……開けたので早く入ってきてください。」 『ふふっ、まだまだだねー?影?』  インターホン越しにそんな会話をした相手は星宇(シンユー)という俺の上司のような人間だ。基本的には俺と俺の主人である父親の間の情報の伝達をする人。  父親が「これをしろ」とか「あれをしろ」とかっていう命令をデータに残したく無いらしく、かといって電話や直接会ったりもしたくないというので出てきたのがこの男。いつも仕事について連絡してくるので俺からするとほとんど上司みたいなものだ。  それと、たまに輝の監視を代行してもらう代わりに俺は星宇の組織からちょっとした仕事も請け負っている。それは決してまともな仕事とは言えないし、法に触れるギリギリ(たまに触れてる)の仕事だけど無闇に一般人を巻き込むことはないので、俺は気分転換をしたくなった時にはこの仕事をしている。  そんな関係の俺と星宇だが、俺は星宇について、年齢が俺よりそこそこ上であることくらいしか知らないし、「星宇」という名が本名なのかさえよく知らない。割と頻繁に仕事についての連絡は取っているが、特に仲が良いとかっていう訳でもない。  ただ一つ言えるのはこの人が… 「やぁ、影。直接会うのは数ヶ月ぶりだね。元気そうで何よりだよ。」 掴みどころのない性格であるということだけ。 「はい、そうですね。それで?何で来たんです?」 「やだなぁ、直接会いたかったからに決まってるでしょ?」 「もしそれが本当だったとしても、あなたはそれだけの理由で動く人間じゃないでしょ。」 「可愛くないなぁ。今回はホントにただ結果を伝えるついでに書類を渡しに来ただけだよ。」 「じゃあさっさと済まして一刻も早く帰ってもらっても良いですか。」 「おやおや、口の利き方がなってないねぇ。影。俺がまた直接指導してあげようか?」 「結構です。それで、結果は?」 「はぁ、せっかちだなぁ。」  星宇に早く帰ってもらえたい俺は星宇を急かしまくり、さっさと結果を教えてもらおうとした。星宇は俺の態度に肩を落とし、ため息をつきながら持ってきていた封筒から紙を出して俺に見せてきた。 「合格だってさ。良かったね。」
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