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星宇の言葉を聞き、少し安堵した俺は星宇から書類を受け取って目を通した。
そこには入学手続きの手順が書いてあり、入学のために必要な書類も揃っていた。書類は保護者が提出しに行くらしいが、俺の両親は行かないだろう。そもそも俺はあの二人に自分たちの子どもとして数えられていないだろうし。
「これ、保護者が提出しに行くってありますけど誰が俺の保護者なんです?」
「俺だよ?」
「え?大丈夫なんですか、それ。保護者がアレだから合格取り消しで、とか無いですか?」
「影〜?喧嘩売ってる〜?」
「いや真面目に。」
「尚更腹立つんだけど…。…はぁ。まー、そこは心配しないでよ。俺だって人様に堂々と言えないような仕事を数え切れない程してきてるんだし、変装と演技ぐらいできなきゃとっくに死んでるっての。」
星宇はいつものように飄々としていたが、その目にはしっかり自信を宿しながらそう言った。まぁ、それに関しては実は俺も大して心配はしていなかったが。
「それもそうですね。
それじゃあ、ついでですしこの書類今完成させますか?」
「当たり前。俺の書く筆跡に合わせて影も書いてよ。保護者の設定は弁護士のシングルファザーね。三者懇談とかやるとき俺が来る理由になるから。」
「はい、わかりました。」
それから俺と星宇は無言でそれぞれの書類を埋めていき、三十分ほどで全ての書類を完成させた。
俺と星宇はお互いの書類に目を通し、不備がないことを確認すると星宇は書類を封筒に戻した。星宇の様子をボーっと見ていた俺に星宇は不意に話しかけてきた。
「そういえば影。お前、凌明についてちゃんと調べた?」
「え?あー、面接で志望理由答えるために多少は調べましたけど。」
「へぇ~。その様子じゃあ、あんまり詳しくは知らなさそうだね。」
「詳しく…?凌明に何かあるんですか?」
「いや〜…。問題があるっていうよりは特殊って言うの?あそこ、ちょっと変わっててさぁ。」
「変わってる、とは?」
「実はね…。」
こうして聞いた学園についての情報に、俺は耳を疑った。
「え…?本当ですか…?」
「ホントホント。信頼できる奴から得た情報だし。」
「…久々に兄に対する殺意が湧きました。」
「ははっ、許してあげなって。多分あの人も知らないんでしょ。」
「自分の行動で巻き添えになる人間がいることをそろそろ知ってほしいです。」
「無茶言わないの〜。あ、でも巻き添えって言えば、影の監視として俺の部下がつくことになったからさ。ちゃんと仲良くしてあげてね〜。」
「えっ?はい?」
「じゃ、俺そろそろ帰るから〜。またね〜。」
「ちょっ、待っ…。」
最後の最後に爆弾を投下するだけして帰っていった上司に、俺はもはや怒る気力も失せてただ大きくため息をついた。
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