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存在意義は、大戦の最中で砕け散った。
数多の戦場を縦横無尽に翔け、無数の敵を破壊してきた。その戦いぶりから「ジャレナの悪魔」と恐れられた彼は、たった一発の弾丸によって、地を這う虫けらへとなり果てた。
修復には多くの時間を必要とした。何しろ彼は、孤高の職人が魂を込めて作り上げた、唯一無二の特別品だったからだ。しばらくの間、彼は工房の中で修理を待つ身となった。
しかし、段々と戦況は悪化し、もはや彼の国は滅亡の一歩手前まで追い詰められていた。
終わりを悟った職人は、特別性の箱に彼を隠した。いつか彼をもう一度空へと送ってくれる、同じ志を持った誰かへと宛てて。
機械帝国は滅びた。
長い長い時が流れ、発見されたその箱は様々な骨董品屋を渡り歩いていた。誰もがこの不思議な箱の中を見ようとしたが、結局それが日の目を見ることはなかった。
そして、すっかり不思議ながらくた扱いとなったそれは、とある機械工の青年の元へとたどり着いた。
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