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「少し前から、腕が時々痺れるようになった。突然電気が走るみたいに。だましだましやっていたけど、最近多くなってきたんだ」
機械仕掛けの蜻蛉と出会った頃から、時々そういうことがあった。あの頃はそこまで頻度が高くなかったが、義翅作りが上達するにつれ、日ごとにその痺れも成長していった。
「……物作りができない僕なんて、何の価値もないんだよ」
技術を失いかけの機械工は、認めたくない現実を口にする。
「君の義翅作りに夢中になってる間、そういう不安を忘れられた。僕は君を通して、自分の誇りを取り戻そうって考えてたんだと思う」
それは紛れもない本心だった。摩訶不思議な機械の復元は、青年にとって素晴らしい現実逃避の術であり、偉業を成し遂げるための手段であった。
どれほど真面目に取り組んでいても、そういった下心がなかった訳ではない。青年はそれを正直に白状した。これからのためには、どうしても彼に誠意を示さなければならなかったのだ。
「でも、それだけじゃない」
そう言って彼は思いを口にする。
「君を、もう一度飛ばせてあげたいって思うんだ」
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