ドラゴンリフライ

　機械仕掛けの蜻蛉は、再び孤独になった。
　静かな世界で、彼は青年のことを考えていた。

　失意のままに田舎へ帰った彼のことを思うと、何だかたまらない気持ちになった。

　彼は義翅を動かした。当然宙には浮かべない。そもそもこの翅での飛び方などプログラムされていない。できるはずなどないのだ。

　機械蟲は機械生物。純粋な彼らは自分にできることしかできない。彼のAIは冷静に状況を処理している。この状態で飛翔することなど絶対に不可能だ。

　それでも、今この義翅で飛びたいと思っている。

　それは蜻蛉型機械蟲殲滅兵器EXBG-02にとって、大きな変化だった。