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一枚の金貨
「ところで、名前は?俺は大井しげるだ」
「僕は池田こうたです」
挨拶もそこそこに、俺はこうたがどこから来たのかを考えた。
「今2024年だけど、それは合ってる?」
「2014年ではないんですか?」
「100円の税込価格は?110円か?」
「108円じゃないんですね」
消費税は分かりやすい例えだった。どちらも導入された時は腹が立ったもんだ。他にこの10年で何か変わったことや発売されたのはあるかと考えた。
「あのゲーム機に新作ができたり、あの会社から新商品でたのは知ってる?」
「……知らないです」
「なるほど、ワープじゃなくて過去からとばされてきたか」
妙に納得しながらもこの状況に冷静でいられている自分に驚いている。
一方、こうたはタイムトラベルをあっさり受け入れられて、少し戸惑っている様子だ。本人も過去から飛ばされてきたことを受け入れていないのに、見ず知らずの男がこうも冷静だと戸惑うのは当たり前だ。
「なんか持ってたりしない?」
「あっ、ロシアのルーブル金貨ならあります」
ポケットから小銭を扱うようにさらっと一枚の金貨を取り出した。そこには、金色に輝くまさしく金が使われた金貨で、知らないおっさんや鷲の刻印がされている年代物であるのが素人でもわかった。
「とりあえず、しまっとけ!失くしたら大変だから」
「……はい。」
「まぁ、なんだ、俺ん所にきたらいい。俺、こう見えてアパートのオーナーだからな」
「……はい」
ポテサラを食べ終え、ゴミ箱にパウチを捨て、戸惑うこうたを連れて公園を後にした。
「とりあえず、ルーブル金貨について調べてみるか」
手かがりがないわけではない、俺のアパートの住人にコインマニアがいる。
そこから解決策が見えてくるかもしれない。なんだか少しわくわくしてきた。
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