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お洒落なお茶会
*
小さなお屋敷の庭にはBBQスペースがあり、ミザリーとジスは子ども食堂のスタッフの皆さんと共にお茶会の準備をしていた。
ミザリーは、ゆりや女性スタッフと共に、テーブルとお皿やカトラリーなどの準備と飾り付けをし、ジスはシェフのたつやさんと共に、お茶菓子やアペタイザーとお茶の準備をしていた。
甘い香りに誘われて、子ども達や大人達が続々と集まってきた。
「今日はみんなをお姫様と王子様にして差し上げます。ミザリーとジスのお茶会へようこそ!!」
「ジスと申します、よろしくお願いします」
集まった子供たちにミザリーは呼びかけ始めた。
隣にはピンと背筋を伸ばして、お茶会の準備をしているジスが子供たちに一礼をする。ミザリーはメイド服で、ジスはいつもの燕尾服を着ている。
二人を見た子供たちのテンションは上がっていった。
「ゆりちゃんも可愛い!」
「さぁ、子供たちも大人の皆さんもこちらのテーブルにお座りください」
ゆりが席へと促していった。浮かない顔をしているのは、メイド服を着るようにミザリーから頼まれ、子供たちの笑顔のために断腸の思いで着ているからであった。
「子供たちが多いので、ノンカフェインのルイボスティーやカモミールや紅茶などをご用意いたしました。お茶菓子は手作りのシフォンケーキ、ゼリー、バタースコーン、ベリータルトをご用意しています。軽食はサンドイッチとアペタイザーをご用意してます」
うさぎの形をしたシフォンケーキに、星の形をしたカラフルなゼリー、真ん丸なスコーン、ハートの形をしたベリータルト。トランプを模したカードや模様のアペタイザーやサンドイッチが横長のテーブルいっぱいに並んでいた。
「わぁ〜すごく可愛い!」
「さあ、座りましたら紙ナプキンをつけましょう」
「お花が書いてある〜」
ミザリーは、座った子供たちから順番にバラのワンポイントがある紙ナプキンを付けにまわった。
「ジスは執事みたいだね」
「もったいないお言葉です」
「ベリータルトをください!」
「かしこまりました、お嬢様」
わぁぁ〜と目をキラキラさせる女の子は、もうすっかりお姫様気分で背筋もピンとして、フォークとナイフを上手に使って食べ始めた。それをみた他の子供たちもジスやミザリーに注文をして、お姫様・王子様気分を楽しみ始めた。
「あの、このベリータルトのレシピを教えてくれませんか?子どもに作ってあげたいのですが……」
「構いません、こちらをお持ち帰りください。今日のお茶菓子のレシピになります。他の方もどうぞ」
用意していたレシピを一人一人に渡していくジス。ミザリーはさすがだわ、と横目を見ながらを親指を立てて合図した。
「ほら、ビビ!あなたも混ざってきなさい」
「ミザリー、こんなに人間が多いなんて聞いてないわ」
「行きたいって変身したのはあなたでしょ?」
ジスの使い魔であるビビは、お茶会と聞いて、見た目は八歳くらいの黒髪ロングヘアに、猫耳カチューシャをつけ、黒のワンピースに、黒のヒールパンプスを履いて、人間に変身をしてまで付いてきた。だが、人見知りが発動して動けずにいた。すると、見かねた少女がビビに話しかけてきた。
「可愛いお耳だね、ここ空いてるからおいでよ!」
「あっありがとう」
ちょっとはにかんだ笑顔で下を向きながらも席につくビビ。ミザリーはそっと紙ナプキンをつけた。
「何にしますか?お嬢様?」
「シフォンケーキがたべたい」
「かしこまりました」
ビビは、あっという間に女の子と会話が弾んでいた。
一通りの注文が終わり、一息つくミザリーとジス。
ミザリーはパチンと、指を鳴らし時を止めてジスに語り始めた。
「ジス、みて!あの子どもたちの笑顔。私も見つけたよ。この笑顔を対価にならなんだってできるわ!」
そう言って、ミザリーは輝く小さな欠片を手のひらにサァっと集めて、ジスにそっと差し出した。ジスは小さな欠片を手に取り、パクっと口に放り込んだ。
「これはこれで美味ですね。素敵な本と出会い、素敵な方々と出会い、素敵な場所と出会い、新しい自分を見つけたのですね、ミザリー」
「そうね、絵本が私をここまで導いてくれたわ、感謝しないといけないわね」
「私たち悪魔も変わっていくべきなのです。血なまぐさい争いや殺生など無用です。平和こそが平穏であり、それを邪魔するもののみを消していけばいいのです」
「それは、私も同感だわ」
再び、パチンと指を鳴らして時を戻したミザリーの目には溢れんばかりの子ども達や大人達の美味しそうな笑顔が広がっていた。
「ジス、本当にありがとう」
「ミザリーが見つけたのですから、お礼を言われることはないですが、受け取っておきましょう」
一冊の絵本と出会い、子供たちへの読み聞かせと出会い、カレーと出会い、ミザリーの人生は大きく動き出した。子供たちの笑顔を対価に、子供たちの笑顔を守って、カレーを共にいただくことを誓った日となった。
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