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子ども食堂
ゆりと共にやってきたのは、庭がある小さなお屋敷の入口だった。
図書館での恰好とは違い、白いブラウスとデニムに淡いピンクのパンプスを履いており、パンプスに合わせた淡いピンクのバックには絵本が沢山入っていた。
小さな門を慣れたように開けて中へと入っていく。様々な花や草木があり、整えられた芝生の上にある石畳を歩き、開かれた玄関の中へと入っていった。
「ゆりちゃん、こんばんは」
「おばさん、今日もよろしくおねがいします」
靴を脱ぎ、二人は用意されていたスリッパに履き替え、家の中へと入っていった。
「実は、読み聞かせ担当をスカウトしてきました!!」
「えっ?もう見つかったの?」
「こんばんは、ミザリーと申します」
「あら、とても綺麗でお洋服も可愛らしい、お人形さんみたい」
「おばさん……」
「あら、失礼。私はかよ。ここの子ども食堂を経営しています」
「ちょっと皆さん、集まって」
かよはキッチンのほうへと向かい、他のスタッフに声をかけにいった。
ミザリーはゆりを見つめて、腕組みをしながら不服そうな顔をしている。
「ゆり、私は働くとは聞いてないわ」
「えっ?そうだっけ?ご飯を食べたいでしょ?」
「勝手ね、まぁいいわ」
キッチンからかよさんを含め四人が出てきた。ミザリーの容姿を見て目をまん丸にしている。
「左から、スタッフのしょうこさん、さえこさん、調理場担当のたつやさん。今日はいないけど、マジシャンのピエールさんとゆりでやっているわ」
「皆さん、はじめましてミザリーです。よろしくお願いします」
それぞれのスタッフに会釈をし、その立ち振る舞いにスタッフ全員虜になっていった。
「ミザリー、制服とかはないのだけど……恰好はこのままでいいの?」
「いいわ、この服を脱ぐ時は寝るときだけよ」
胸に右手を立て、左手を腰に添えてフンと誇らしげに洋服を見せつけた。
ゆりはくすっと笑いながらミザリーにあるチラシを見せた。
「こども食堂は週三日やってるの。普段は、かよおばさんがお料理教室をやっているのよ。子ども食堂は月曜日が絵本の読み聞かせをしているの。基本は自由に過ごしているのだけど、イベントみたいなのがあると、子供たちも喜ぶから。ご飯は基本的にカレーよ」
「カレー?」
「カレー知らないの?ミザリーはお嬢様なのかな」
「知らないわ」
チラシの写真には、カレーが載っており、これがカレーであることをゆりから教えてもらったミザリーはチラシとにらめっこしていた。
「もうすぐ子供たちがくるわ。この中から好きな絵本を選んで」
「わかったわ、色々あるのね」
小さな本棚に沢山の絵本が並べられている。どの絵本にするか悩んでいたところに、あの本が目に留まりそっと取り出し立ち上がった。
ミザリーは少しはにかみながら子供たちの到着を待っていた。
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