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「……まただ」
うんざりと途方に暮れる気持ちを混ぜ合わせながら、わたしは大きく鼻でため息をつきつつ、道路の脇に立ち尽くした。
左側へ目を向ければ、売地にでもなっているのか、雑草の生い茂る見慣れた空き地が視界に映る。
土地になんて全然興味がないため調べてみようと考えたことすら皆無だけれど、普通の一軒家を建てられるくらいの面積はあるだろう。
わたしが幼い頃から、ずっと空き地のままとなっている、謎の空間。
オレンジ色に染まる夕空の光を浴びて淡く輝く雑草を眺めながらもう一度だけため息をこぼし、わたしはポケットに入れていたスマホで時刻を確認した。
午後六時二十三分。
「またこの時間帯だ……。どうなってるんだろう?」
スマホから顔を上げ、人の気配が消え失せた路地をぐるりと見回し、わたしは一人呟く。
最初にこのおかしな事態へ陥ったのは、今からちょうど二週間前。
学校の授業が終わり、所属している手芸部の活動もそつなくこなして、いつも通りの時間にいつも通りの道を歩いて帰宅していたわたしは、どういうわけか道に迷ってしまった。
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