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プロローグ
幼い頃大好きだった絵本は、プリンセスが悪者に拐われて王子様が助けにくる王道ストーリー。
表紙がボロボロになっても両親に呆れられても手放せなかったその本を、年の離れた親戚のお兄さんは会うたび笑顔で読んでくれるから、私はその時間ごと大切にしていたし思い出だけは今も心の奥底で宝石みたいにキラキラ輝いている。
だけどある日いつものように絵本を読み聞かせてくれていたお兄さんが言ったのだ。
「この悪者は優しいね」
「やさしいの? プリンセスを連れて行っちゃうのに?」
「うん、だって、自分が"悪者"になってまで王子に見せ場をつくっているでしょう?」
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