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王位継承者のみに授けられる巨大な魔力を受け止めることが可能な女性――それが王家から選定される“聖女”である。
現存するマヒの一族のなかでも国有地である“魔女の森”を管理しているデ・フロート公爵家の一人娘ジゼルフィアは生まれた頃から稀有な大精霊の加護を持っていた。並外れた加護のちからは“魔女の森”の統治者である大魔女タマーラによってハーヴィック全土へ送り届けられ、冥穴の結界封じに一役買っている。ほかのマヒの一族のなかにも結界の守護や騎士団とともに国境での魔物討伐など、国のために働いている聖女や魔女と呼べる女性も存在していたが、第一王子リシャルトの花嫁として各家が候補に推した女性たちは年上だったり魔力はあれど魔法が使えなかったりで“聖女”としての役割を果たせる者は誰一人としていなかった。ゆえに聖女選定などという大仰な儀式でありながら、リシャルトの婚約者はあっさりジゼルフィアに決まったのだ。
「結婚式を遠くから見たが、ヴェールをしていて顔がわからなかったぞ」
「さようですか」
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