02. 妖精王の娘と悪魔の妃

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 ミルクティ色の髪と琥珀色の柔らかな色彩の瞳を持つ美しい少女はリシャルトの魔力を前にしても平然としている。 『ごめんなさいね、精霊たちもまさか霊獣持ちの王子が直にいらっしゃるとは思っていなかったみたい』 『……君は平気なのか?』 『わたくし、魔法酔いしない体質なの。それだから王家はわたくしを聖女候補にしたのでしょう?』 『では、君が』  ――ジゼルフィア・マヒ・デ・フロート。  強大な“時”の魔法を司る精霊ミヒャエルの加護を持つマヒの一族で、国有地化している“魔女の森”を代々管理している一族の娘。 『ジゼって呼んでくださいな。王子さま』 『俺のことはリシャルトでいい――リシャールと』 『わかりましたわ。()()()()()()()』  リシャールと呼ばせようとして、彼女はリシャルトさまと返してきた――それは“死に戻り”をする前の彼女が好き好んで呼んでいたリシャルトの呼び方だった。  だが、彼が“死に戻った”先で起きた結婚初夜。そのときの彼女は素直に“リシャールさま”と呼び、その後はずっと“リシャール”のままだ。
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