02. 妖精王の娘と悪魔の妃

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 建国史をぱらぱらめくっていたシュールトは、ふいに目に留まったページを読んでハッとする。 「ハーヴィックの“時”を司るマヒの一族、デ・フロート公爵家」 「ジゼの生家がどうかしたか」 「デ・フロート家はほかの”マヒ”の一族と違って、精霊の加護を得るためにいまも若い娘の寿命を削らせてますよね……それも、自分たちの一族の繁栄を王家にも隠すことなく世に知らしめてる。”時”という不確定要素を司る家ゆえに独特の因習を持っているのはハーヴィック王家と変わりませんが、それにしては異質な気がして」 「……俺たちが封じている霊獣のように、か」 「そうです。俺たちは妖精王が初代国王へ娘のヒセラルフィアを捧げた際に分割された霊獣リクノロスの尾を生まれた頃から封じられていますが、父王も立太子する以前はそうだったと聞きます。代々継承される霊獣リクノロスと異なり、デ・フロート家に君臨しているのは”時”の精霊ミヒャエル――それこそ妖精王さながらの不老不死を謳う()()()です」  シュールトの鋭い指摘に、リシャルトの書籍を捲る手が止まる。
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