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シワひとつなかった寝台のうえにそうっと押し倒されたミルクティ色の髪をした花嫁は、銀髪碧眼の花婿からの熱っぽい視線を受け、ごくりと唾を飲み込む。
「リシャルト・ステラデ・ハーヴィック?」
「本名を略さずに呼ぶな堅苦しい。結婚初夜の床で会談を行いそうな勢いだな」
「そうですね……それではリシャルトさまとお呼びしても?」
「――リシャールでいい。君はジゼ、か」
「ええ、まぁ……リシャールさまのお好きなようにお呼びくださいませ」
リシャルトがジゼルフィアのことをジゼ、と口にした一瞬、彼女は琥珀色の瞳を曇らせ切なそうな表情を浮かべる。だが、彼はそのことに気づかない。
それよりも寝台に押し倒された花嫁の誘うような姿にリシャルトは興奮しているようだった。
「ジゼ。結婚式のときにも思ったが、君はとてもきれいになったのだな」
「そんな」
ジゼルフィアと呼ばれ顔を赤らめながら否定する。なぜなら自分は過去のリシャルトを知らないから――けれどそれはけして口外してはいけない秘密だ。
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