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王位継承者であるリシャルトに不慮の事態が起きた場合、聖女の身柄は強制的に第二王子シュールトへ譲られることになる。そのようなことはけして起きないと信じたいが、魔物の襲来や近隣諸国の紛争の状況を考えると最悪の事態も視野にいれなくてはならないだろう。そのとき慌てないためにも聖女とは懇意になっておきたいのだ。
……いや、シュールトは純粋に興味を抱いていた。あのリシャルトの魔力を受け入れられるという生まれながらの聖女ジゼルフィアに。
「楽しみだな」
綻びが生じた冥穴を封じるためにはリシャルトやシュールトが持つ王家の人間だけが持つ魔力を中和する聖女のちからが必要になる。場合によっては現地に赴くシュールトが聖女に中和してもらう可能性もあるだろう。聖女が王家にとってどのような存在なのか、妾腹のシュールトには知らされていない部分もある。聖女はすべてを知っているのだろうか。知っていて、第一王子リシャルトの花嫁となったのだろうか。実に興味深い。
にやりと笑うシュールトを怪訝そうに側近が見つめているが、彼は気にすることなく口にする。
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