似ているようで……

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「ねえ、おばあちゃん、脇の減らし目、本通りにやってみたけど、合ってるか見てくれる? あと、編み目が縞々なの……」 「どれどれ、だいたいいいように見えるけど、もう少し編んで型紙と大きく違うようなら、おばあちゃんが編み図を直してあげるから、このまま編み進めてみて。この縞々はね、多分やり直してもまたできると思う。何枚か編むうちに均等に編めるようになって、自然に編み目が揃ってくる」 「編み物も修行?」 「最初からできるのはスゴいことだけど、段々うまくなって難しいものや自分にしか作れないものが編めると嬉しいでしょ」 「そこまで修行し続けられるかなあ? 目標は、うん、おばあちゃんの昔の本に載ってるあのセーターは編んでみたい」 「若い頃にトライして投げ出したやつ。あれはちょっとばかり面倒くさい。あの頃好きだった俳優さんがモデルで、だからペアで着たかったんだけどね」 「ペア? 正反対にママはなんにも作らないよね。家にはミシンもないし、私の給食袋も体操服入れもおばあちゃんの手作り」 「みのりが家庭科、特に裁縫が嫌いなのは私のせいね」 「おばあちゃんがいろいろ口出すからやる気が失せた、ってママが」 「つい、余計なことを言ったりしたりで、興味を持つ前に嫌いにさせちゃった」 「みのりがああだったから、まさか真由ちゃんがこの部屋の常連さんになるなんて。親子でも正反対……」  淳子さんの娘であり真由ちゃんの母親であるみのりさんはこの部屋を「ばあの趣味部屋」と呼び、滅多に入らない。長年の間に貯まった毛糸、レース糸、刺繍糸、キルト糸、キャラクターの綿生地やカーテン生地、レースやリボン、手芸材料が綺麗に分類されている。使い込んだミシンやアイロン、編み機などが棚に綺麗に並んでいる。  真由ちゃんが名付けた「OBA手芸教室」、時々家庭科の宿題に困った友人を連れてくることもある。
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