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「そうそう、今日ね、ボタンの代わりにマジックテープで止める前開きのシャツを大ばあばのところに持って行ったのよね、そしたら痛いから嫌だって言うの。着やすそうだったのに」
「あ、でも大ばあばの言うこともわかるかも」
真由ちゃんはその下着を撫で、マジックテープを剥がしたり貼ったりを繰り返している。
「このミシンの縫い目もゴワゴワして痛いかも」
「じゃあ、もったいないけど雑巾にでもしちゃおうか」
「おばあちゃん、スナップはどうかな」
「それなら、スナップのシャツを買ってくるわ」
「買ってくる前に これをスナップに変えて、大ばあばが脱ぎ着できるか見てみたら?」
ボクの出番だとわくわくしたのもつかの間、真由ちゃんは淳子さんの裁縫箱でなく彼女の専用棚の中からスナップボタンを取り出している。
「じゃあ、真由ちゃんに任せるわ」
「やってみる」
それぞれが没頭すると割と静かな時間が流れる。時々ハサミのパチンという糸を切る音や二人の独り言も聞こえてくる。淳子さんは着物のリメイクを友人に頼まれ、作業中。
「あら、手元が暗いと思ったらこんな時間よ。そろそろ帰らないと」
「あと、少し」
淳子さんは立ち上がると電気を点け、通りに面した窓の厚手のカーテン引いた。
「真由ちゃん、続きは明日にしたら?」
「できたよ。どう? 大ばあば、着てくれるかな?」
「どれ、見せて。大きなサイズで色つきのスナップボタン。掛け違えないように正反対の色を交互にしたのね」
「一番上が赤、次が青、赤の順に。左手の赤と右手の赤をぎゅっと押す」
淳子さんがスナップボタンを止めたり外したりして試している。
「わざと緩めのを合わせたのね」
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