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今、お食事の支度を⋯⋯
一通りお身体をペロペロなさいました猫様は、ギロリと私めを睨みつけ、低い声で「にゃーん」とお鳴きになった。
「おい、メシを出せ」
ここからがさらなる試練。
猫様は膝の上にお座りになったまま動こうとなさらない。
だがお食事を差し上げるにもオヤツを差し上げるにも台所に行かねばなりません。
おどきいただこうとすると噛みつかれる。先述のとおり、お身体に触れてはいけないのです。
じっとどいてくださるのを待つしかないのですが、猫様のガン飛ばしはかつての不良を彷彿とさせます。
怖い⋯⋯。怖い⋯⋯。
どいてくださればお食事を用意いたしますが、私めのお願いなどは聞き届けていただけないのでしょうか。
その昔、ベルサイユ宮殿では、身分が上の者が話しかけてくれるまで、身分が下の者は待たなければならないという決まりがあったらしいですね。
猫様にお名前はあらせられるのですが、私めのようなこの家の従僕は、お名前をお呼びいたしますことを許してくださらないので、ただひたすらにお待ち申し上げるしかなく、ましてや絹のようなお肌(毛)に手を触れることなど、天にツバ吐く暴挙にも等しいでございますため、それもやはりただひたすらにお待ち申し上げるしかないのでございます。
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