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不機嫌
あ。
猫様が不機嫌におなりあそばされた。
早くお食事の支度をと、動きたいのでございますが、私めのように学もなく身分も卑しい者といたしましては、あゝ無情、どうすることもできないのでございます。
ですから、そっと、そっと、ちょうど私めが食べていたニボシを差し出しましてござりますれば、みるみるうちに猫様の形相がお変わりあそばし、金切り声とともに私めの腕をホールド、ケリケリつきでお噛みあそばされ、そのお顔はまさしく悪鬼のようであり、痛みよりも恐怖を感じたのでございます。
ひとしきり私めの腕をお噛みあそばした後、ぷいっと膝から降りてどこかにお隠れあそばしました。
私は流れ出る自らの血におののき、我が身を抱きしめて落ち着かせましたが、猫様が数分と立たずにお戻りになられ、また私めの膝にどっかとお座りになられました。
失念しておりました。
私めがこの時間にお食事を用意できるようにしてくださっていたのですね。なんとお優しい⋯⋯。
しかしこの愚かで身分も卑しい私めは、その寛大な御心に気づくこともせず、ただぐうたらと恐怖におののいていたのであります。
どうぞ叱ってください。
私めを折檻してください。
その目⋯⋯。
お怒りになられておられるのですね。
どうぞお噛みになって!
私めに罰をお与えください!
猫様がギロリと私を睨みつけました。
「この役立たずが」
そう言われている気がいたしました。
それからも、それからも、日々このようなことが繰り返されました。
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