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「好きだよ」
抱き合い意識が途切れる寸前まで耳元で囁かれれば、それが頭の中をぐるぐる廻り夢にまで出てくる。夢で会う七瀬はやっぱり優しくて、そのあたたかさに包まれながらこの部屋で2人、生きていく…そんな夢。
ここまでくれば夢と現実の境目が曖昧で、よくわからなくなってくる。七瀬が好き、とまでは言わないが、嫌いではないかもと思えてくるのだ。
まともな思考なら強制的に閉じ込めるような人大嫌いと思えるだろうけど、こんな毎日じゃ脳が麻痺してしまう。
私が大人しくしてれば優しいし、ご飯も食べさせてくれるしお風呂も入れてくれる。
欲しいものは何でも買ってくれるし、暇だといえば一緒に映画を観たり、時間の全てを私に使い惜しみなく愛してくれる。
考えてみれば、奥さんもいるくせに他の女に手を出すような最低な男といるよりずっと幸せなのでは? と気付いてしまったのだ。
そんな日々を過ごす中で相変わらず外されることのない手錠と、気分次第でたまに着けられる首輪にも心理的な抵抗が薄くなってきた頃、ふと七瀬が言った。
「芽依ちゃんのスマホってさぁ、誰からも全然連絡こないんだね〜」
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