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「そ、そう…?」
咄嗟に表れた反応とは別に、正直図星だった。私のスマホは昔からその存在を忘れるほどに大人しい。
サボりがちな大学、そこに通う友達とは名ばかりの、関係図にも載らないような友人たち。たまにアプリからのお知らせがくることもあったが、煩わしくて通知は全てOFFだし。
一人暮らしでバイトもしていない、親との連絡も頻繁ではない私が今現在監禁されていることはきっと誰も気付いていないのだろう。
しいて言えば直前まで連絡をとっていた彼が唯一の希望と言えるけれど……子供が産まれてそれどころじゃないんだろうなと妙に冷めた目線で結論づけた脳内に大きな溜め息が漏れる。
「いなくなっても、誰にも気付かれないなんて可哀想…俺だけは芽依ちゃんの味方だよ」
耳触りの良い言葉を吐き、ゆるやかに細めた目の奥で微かに光る眼差しが狂気に満ちた喜びを隠しきれていない。
腕に触れ、徐々に体全体を巻き込み包む七瀬を受け入れたら"可哀想な私"の出来上がり。
私は知っている。七瀬は「そうであって欲しい」のだ。
黒い願望──監禁した自分を肯定するみたいに可哀想な私を救ってあげている気になりたい、それだけ。
演じるしかない今は、そんな願望すらも飲み込んで「ありがとう」と七瀬の胸に顔を埋めた。
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