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僕は、ぎこちなかったけど彼女は積極的に話してくれた。
こんなに長く女性と話すなんて、生まれて初めてだ。
その後、僕は彼女のバイクの後ろを車でついて行き、本で探したステーキ屋さんに向かった。
もちろん、彼女の提案だ。
ステーキ屋さんに入り、彼女はビッグサイズのステーキを注文した。
「隣のお客様はどうしましょう?」
店員が僕に聞いて来た。
僕は決めるのに時間が掛かる。
これも、僕の悪い癖だ。
しかし、待たせたら彼女に失礼だ。
「僕も同じ物で……」
彼女は笑った。
「焼き方はどうなされます。」
「私は、ミディアム」
彼女は言った。
僕は意味が分からなかった。
「ぼ、僕はサイコロにして下さい。」
「サイコロ⁇」
「はい。サイコロの形に刻んで下さい。」
彼女は大笑いをした。
僕の実家では、サイコロステーキにする。
何故なら、お箸で食べやすいからだ。
だからナイフやフォークなんて使った事は無い。
目の前には、ナイフとフォーク……
どうしょう……
しかも彼女の目の前で僕は恥をかいてしまう。
「分かりました。
サイコロステーキでお持ちします。
焼き加減は、どういたしましょう?」
「普通でお願いします……
そ、それにお箸を一つ、お願いします。」
彼女は笑いが止まらないみたいだ。
幸い、サイコロステーキにしてくれたのでナイフとフォークは使わずに済んだ。
彼女は大きなステーキを美味しそうに食べる。
いつもの優しい笑顔で……
そして彼女は次々と僕に質問してくる。
「あっ、名前を聞いて無かったね!」
「僕は、加藤健二」
「カトケンだね!」
それは、中学時代から言われていたあだ名だった。
「それは昔から言われていたよ。」
「私は、村野明美」
「えっ、村のアケビさん」
彼女は大笑いした。
「アケビじゃないよ……あけみ。」
ただ僕は、言い間違っただけだった……
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