付き合って下さい。(改正版)

5/12
前へ
/61ページ
次へ
 僕は洋画が好きだ。  彼女を車に乗せる時って、僕は車を降りてドアを開けてやるのが男としてのマナーなんだ。  男たるもん、ゼントルマンじゃないと女性には好かれない。  僕は、洋画を観て少しは女性の接し方を勉強したつもりだ。 「アケビさん、こちらにどうぞ!」 「カトケンさん、気を遣わないで!」  僕は先回りして車のドアを開けた。 「カトケンさん……  私、助手席じゃ駄目ですか?」 「あっ……」  洋画でボスやお偉いさんを乗せるのは後部座席だから勘違いしていた。 「す、すみません。前にどうぞ!」 「カトケンさんて、面白い!  沢山、笑わせてくれるし、私、都会に出て来てこれだけ笑ったの初めて!」 「いえっ……  全て、地でやってます。」  アケビさんは腹の底から笑っている。 「ギャハハハッ」  二人で見る雑貨屋は凄く楽しかった。  海外の怪しい首飾りをアケビさんはふざけて僕に付けようとする。  恋人ってこんな気持ちなんだ。  もし、この人が僕の彼女になってくれたらどれだけ幸せなんだろう……  楽しかった二人だけの日帰り旅行は、どうにか無事に終わった。  でも、楽しかったなぁ……  夢の気分だ。  その日の僕は、全く眠れなかった。  目を閉じたらアケビさんの屈託のない笑顔だけが浮かび、窓を開けれは太陽の日差しで朝を迎えていた。  あの日以来、僕はコンビニに行く回数が増えた。  前は仕事が終わって、帰宅途中に寄るだけだったが、今では仕事に行く前にコンビニに寄ってアケビさんの笑顔を見る。  ある意味、ストーカーになったかも知れないが、ストーカーって自覚が無くって行動するらしい。  僕には、ちゃんと自覚があるので大丈夫だ。  朝は忙しく店員は3人、年配の店長らしい人にアケビさんは気にして僕に小さく手を振る。  それだけで僕は朝から元気が出るんだ。  また、アケビさんと何処かに行きたい…。あ  でも、そんな事、言える訳がない。  もし、そんな事を言って断られたりしたら全てが終わってしまう。  いやっ……  ちょっと待てよ……  終わる前に、僕は何も始まってないじゃないか……  僕はアケビさんを誘う練習を家で始めた。  
/61ページ

最初のコメントを投稿しよう!

24人が本棚に入れています
本棚に追加