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僕は、実家から持って来たスタンドミラーの前で練習した。
「ア、アケビさんの休みの日、ぼ、僕とまた、ドライブに行きませんか?」
だ、駄目だ……
どうしても、どもってしまう……
鏡の前なのに……
今日も言えなかった……
帰ってまた、練習だ……
僕は毎日、100回は練習している。
明日こそは必ず……
仕事が終わり、コンビニを覗くと絶好のチャンス。
店員はアケビさんだけだ。
「アケビさん…
は、話したい事が……」
「私も……」
「じ、じゃ、アケビさんから……」
「今度、私のバイクでツーリングに行かない?
実家からヘルメットを送って貰ったの!
届くまでカトケンさんに言えなくって!」
「い、良いんですか?
い、行きます!
ぼ、僕、絶対に仕事を休んでも行きます。」
「大丈夫ですよ。
カトケンさんの勤務に合わせて!
こっちはシフト変更くらい直ぐに出来るから!」
「そうなんですか?
じゃ、今度の日曜日なんて大丈夫ですか?」
「大丈夫ですよ。
ところでカトケンさんの言いたかった事は?⁇」
「もう、忘れました!」
お互いの近い駅で待ち合わせした。
僕は電車を降りて改札口に向かった。
アケビさんはバイクを置いて改札口で待っていてくれた。
予定より10分早く着いたのに…
「おはよう!
私、田舎から出て来たばかりだから駅が分からなくて早めに来たんだぁ。」
「ご、ごめんなさい。
女性を待たせるなんて……」
「まだ、集合時間前になってないよ。
カトケンさん、また謝った。」
アケビさんは、また笑い出した。
僕は少し照れて頭を掻いた。
「はい。
ヘルメットどうぞ!
私の運転荒いから、しっかりしがみ付いてね!」
僕はヘルメットをかぶりったが、アケビさんの後ろに乗る事に躊躇した。
どうやって乗るんだ……?
あっ……
シートに手を持つ所がある……
ここを持って乗ったら良いんだな……
「駄目だよ。
しっかり私の腰を持って腹に手を回して!
しっかり持たないと落ちちゃうよ。」
えっ……
腹に手を回す?⁇
もう、僕はパニックになった。
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