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6.ドライブのお誘い
『夜景の綺麗な場所があるから、行かない?』
そんなメッセージが西嶋さんから届いたのはあれから数日後。そのメッセージが届いた時、ちょうど逢阪と居酒屋で飲んでいて、驚いた俺は危うくスマホを落としてしまいそうになった。
「どうした? すごい慌ててんじゃん」
逢阪が焼き鳥を頬張りながら聞いてきたので、俺は西嶋さんとのことを一から教えた。
『レモンイエロー』の車の持ち主であること、どうやら同性の恋人がいること、最近見かけなくなっていたが、偶然出会って連絡先を交換したこと。
それを聞いた逢阪は、焼き鳥の串を皿に置いて大きなため息をつき、俺をじっと見た。
「あのさあ、お前、高校の時彼女と揉めたじゃん、好きでもないのに付き合ってさあ。言い寄られたらそのままついていく癖、まだ治ってないのか。今回も同じじゃん。しかもそいつ恋人いるっぽいんだろ」
もお、と頬を膨らます。逢阪は俺が女に興味ないことを学生の時に見抜いていた。いつも能天気にしているやつなので、隠していたのにバレた時には結構驚いた。
「俺、ダチが遊ばれそうなのを黙って見るの嫌だからな。それ、行くなよ」
逢阪が心配してくれていることはありがたかったし、自分も分かっているんだ。あの時マンションから手を振っていた小柄の男性の姿がどうしても頭によぎる。
男性が恋人であれば、何故俺をドライブに誘うのか。やっぱり逢阪の言う通り『遊び相手』にされそうなのだろうか。だけど、俺は今までも決まった相手がいなかったし一晩限りで遊んできた。だから今回だって大丈夫だしもう大人だから、割り切れる。
心配してくれる逢阪には悪いけど、俺は結局西嶋さんの誘いを受けることにした。
夕方に駅のロータリーで待ち合わせ。車がロータリーに入ってくると、チラホラと視線を投げてくる人がいた。やっぱり目立つんだなあと思いながら、助手席のドアを開けると、西嶋さんが暑いねえといいながら笑った。
今日もまた真夏日でうんざりだった。十八時を過ぎて、日が落ちてきてもまだ気温は高くて、正直言ってエアコンのないこの車だと堪える。俺はコンビニで買っていた麦茶のペットボトルを口に含んだ。
車内では他愛のない話で盛り上がり、年齢が近いせいもあって、目的地の夜景の綺麗な公園に着く頃には、もう俺は敬語を使っていなかった。
到着したのは、山の中腹にある公園だ。俺はこういった夜景とかに疎いので知らなかったが、割と有名なところらしい。
車を止めると、窓から入っていた風が止まる。もうさすがに昼ほど暑くない。車を置いて公園の展望台になっているところから街を見下ろす。キラキラと街の明かりが綺麗で、なるほどこれは人気が出るわけだ、と納得した。
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