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進さんは、お家やご家族の事が嫌いなのだろうか?
「小智子さん! お風呂沸かすのにどれくらい時間かかってるの?!」
台所に戻ると、案の定、久子さんから叱られた。
「スミマセン、進さんに背中流しを命じられまして」
正直に言うと、普段は台所には居ない幸恵さんが不愉快そうな顔をした。
「進 ″ さん″ ? 背中流し?」
どれが機嫌を損ねたのだろう?
珍しく料理を手伝っていた幸恵さんが、分かりやすく拗ねて炊事場を出ていく。
「あの子は、ずっと進坊っちゃんに憧れてたからねぇ。身分違いだと分かってはいても。三年ぶりに現れた坊っちゃんは益々男前になってたし、気持ちは分かる」
久子さんが軽く溜息をついて、料理を盛っていく。
確かに美しい青年ではあるけれど……お家に反発してる道楽息子が一体、何をしに戻ったきたのか。
それは、その日の晩御飯時に明らかになった。
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