俺の女になれ

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「え? 椎茸、いつも入れてますけど?」 久子さんが煮物の鉢を覗き込んで答えると、進さんのこめかみがピクリと動く。 「俺が椎茸と葱だけは食えないの知ってるだろ? それとも、とうとうボケたのか? あ?」 「進、言い過ぎよ。貴方が滅多に帰って来ないから苦手な物も忘れてしまうのよ、ね、久子さん」 進さんを宥める奥様の横顔には、疲労感が漂う。 「煮物が椎茸に支配されて食えたもんじゃない」 なんて贅沢な坊っちゃんなのだろう? 文句ばかり言って、椎茸を排除する進さんと不意に目が合う。 「さっきから何か言いたげだな。下女」
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