87人が本棚に入れています
本棚に追加
「え? 椎茸、いつも入れてますけど?」
久子さんが煮物の鉢を覗き込んで答えると、進さんのこめかみがピクリと動く。
「俺が椎茸と葱だけは食えないの知ってるだろ? それとも、とうとうボケたのか? あ?」
「進、言い過ぎよ。貴方が滅多に帰って来ないから苦手な物も忘れてしまうのよ、ね、久子さん」
進さんを宥める奥様の横顔には、疲労感が漂う。
「煮物が椎茸に支配されて食えたもんじゃない」
なんて贅沢な坊っちゃんなのだろう?
文句ばかり言って、椎茸を排除する進さんと不意に目が合う。
「さっきから何か言いたげだな。下女」
最初のコメントを投稿しよう!