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しかし。もう、そんな事はどうでも良い。私は終わりだ。
主のご子息に手を上げてしまったのだから。
その夜。
いつものように炊事場の片付けが終わり、各々の女中部屋で自由時間が出来る10時過ぎ。
私は、少ない荷物をまとめ上げて、お屋敷をそっと出た。
もう、ここにはいられまい。
「大変、…お世話になりました」
玄関の表札に、深々と頭を下げた。
先月のお給料は頂いたばかりだったから、仕送り分を引いても、汽車賃や船賃位は手元にあった。
一旦、田舎に帰ろう。
けれど、この時間に便はあるだろうか?
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