俺の女になれ

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「あんた、こんな所で何してる?」 人影が喋った。 髪が長いので直ぐに分からなかったが、目を凝らすと、それは中年男性に見えた。 ボロボロの服をまとい、最近嗅いだ事のないような悪臭を放っている。 「…道に迷ってしまって」 私が答えると、その男性は頭をボリボリ掻きながら、近寄ってきた。 「何処に行きたいんだね?」 生ゴミのような、獣のような匂いが鼻をつき、私は思わず椅子から立ち上がり、のけ反ってしまった。 「…佐渡時計店、もしくは駅…に…あっ!?」 全部言う前に、その男性は私の持っていた鞄を引ったくった。
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