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「何をするんですか?! 待って!」
私の全財産が入った鞄!
それを奪った男性は再び木々の間に消えていく。
「お願い、返して!」
それがないと、何処にも辿り着けない。
男の後を追いかけた先には、似たような格好でたむろする集団があった。
悪臭が増す。
暗がりの中、いくつもの視線が自分に向けられるのを感じ取る。
足がすくんだ。
ここは、浮浪者の溜まり場だった。
こんな豊かな東京にも、路上生活者がいるんだ。
「ねぇさん、いい着物を着てるね」
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