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何度となく繰り返される悪夢。
沙月はノートを開いた。
母親はなぜ自分の名前のノートを残したのだろう。
殺気は沙月・・
そして「妹」とは・・
沙月に妹はいない。
ふと、ノートの違和感に気づく。
そこには親子3人の仲睦まじい写真が挟んであった。
お父さんに抱かれたこの子はだあれ?
あの日、沙月は
偶然にも見てしまった。
父親の後ろ姿を・・
女と子供・・仲睦まじい・・それはあの写真と同じ。
迷わず父親の隣を歩く女の肩を掴んでいた。
振り向いた女が驚く隙も与えず
頬を叩いて睨みつける。
そして、逃げた。
「待って!沙月ちゃん!? 沙月ちゃんでしょ?」
沙月は聞こえないふりをして
点滅する信号に向かって早歩きした。
と、母親の声が耳を掠めた。
『可愛い』
赤に変わった信号で
人が立ち並ぶ交差点。
私を呼んだ女と
その子供も並んでいる。
『可愛い』
確かに死んだ母親の声がそう言った。
そして、人混みの間から
スッと出て消えたなつかしい手。
と、同時に
鈍い衝撃音が沙月の世界を
この世へ引き戻す。
死んだはずのお母さんが
あの子の背中を押した・・?
沙月は自分の手の感触を確かめる。
わたしが・・
わたし・・が・・?
お父さんと
あの女と・・・
あの・・女・・・
あれ?・・ばあや?
ばあやとあの子・・
あ・・のこは・・可愛い・・・
可愛い・・
お母さんの声は・・わた・・し・・・
沙月は頭を抱えてその場に崩れた。
ふと、目が覚める。
「お嬢様、朝ですよ。
怖い顔されて・・また、あの夢ですか?」
そう言うと、さりげなくノートを枕元に置く。
そして、何事もなかったように部屋を立ち去る
ばあやの顔から表情が消えた。
「絶対に忘れさせない・・」
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