四ノ章

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紅葉と風雅は白神家の庭に帰宅した。 荷物が多いので神獣の姿で帰って来たのだが紅葉はヨダレを垂らしながらモフモフしまくっていた。 「モフモフ最高〜!」 『荷物持つより紅葉のコレが一番精神的疲労が溜まるね…』 元気一杯の紅葉に対して風雅は疲れていた。 紅葉のことは好きだがテンションがヤバすぎて付いていけない。 「風雅様、お帰りなさいませ。紅葉も。お疲れのところ申し訳ございませんが少々よろしいでしょうか?」 帰って来た小太郎が出迎えてくれたのだが、少し困ったような神妙な面持ちをしていた。 小太郎に案内された部屋は紋十郎がお客を迎える時に使う和室の応接間だ。 「父さん、風雅様をお連れしました」 中に入ると難しい顔をした紋十郎と隣には楓。 向かいには知らない男性。 部屋の隅には直美と司と美晴が座っていた。 風雅と紅葉も座り状況を尋ねる。 『コイツはアヤカシだね。虎のアヤカシかな?』 「アヤカシがなんでいるのよ!」 紅葉はアヤカシと聞いて警戒心を強めたが風雅はそんな紅葉の頭をポンポンし落ち着かせた。 「はい。風雅様がおっしゃる通り虎のアヤカシです。実は先程うちを訪ね楓を番にと打診がございまして風雅様のご意見を伺いたいと思いまして…お呼びして申し訳ございません」 紋十郎が頭を下げ説明した。 「楓は次女でしょ!何が目的よ!私の楓に何企んでるのよ!」 紅葉はアヤカシに対して泣くほど嫌な思いをし双子の楓も紅葉に間違われ嫌な思いをしていたのを当然知っているからこそ敵意剥き出しにしブチギレていた。 「僕は氷空と申します。氷の空と書いてソラです。前々から楓さんの事が気になっていて…次女としり諦めていました。ですが、紅葉さんが白虎様の神子だそうで、もしかしたら楓さんを番にできるのではと思い声を掛けさせていただきました」 氷空と名乗るアヤカシはオレンジに近い髪に黒のメッシュ、目は黒く、175センチ以上の20歳ほど。 かなりイケメンで真面目そうな感じだ。 「掟ではアヤカシが番にできるのは長女のみです。私の父や祖父である先代、先々代当主の時代にアヤカシが島の住人の長女以外を番にしたいと相談があったようですが掟ゆえ認めなかったと聞いております。紅葉の場合は特殊で初めてのことですので判断ができません」 大昔、まだ4つの島がなかった時代にアヤカシの女性が生まれにくいことから人間の女性を攫っていた。 神が提案し霊力のある人間だけを4つの島に分けてからはなくなった。 アヤカシとしては番を探しやすいし長女だけだが人間も繁栄してもらわないと困るのでアヤカシも掟を守っている。 利点としては攫う必要がないので人間側の気持ちを尊重しつつお互いに恋愛ができる。 紅葉のように変なアヤカシに執着されるのは稀だ。 色々言いたそうな紅葉を制しながら風雅は口を開く 『島によって長女以外でも可能だよ。アヤカシに相手にされない長女ちゃんや長女しかいない家はアヤカシの番になってない場合があるでしょ?』 アヤカシにも好みや霊力の強弱の都合などがある。 繁栄してもらわないと困るので長女しかいない家に番は迎えないこともある。 『紅葉がオレの神子とかは関係なく楓の気持ち次第だよ。楓はどうしたい?』 風雅は楓を見る。紅葉は駄目と言ってほしくて風雅を無言で睨みつけた。 「私はいきなり話し掛けられたり番なんて無縁だと思ってましたから正直、ビックリしています。だから番のことはまだ受け入れるかは判断できません」  それを聞いた氷空は少し落ち込んだ。 紋十郎は父として娘を嫁だろうが番だろうが出したくないので心の中でガッツポーズをした。 しかしそのガッツポーズも直美の発言で崩れることになった。 「お茶友達からはじめたら?」 「そうですね!楓さんがよろしければお願いします」 氷空は顔をあげ楓をみる 「紅葉や風雅様も同席でもいいならお茶だけなら」 「構いません!ありがとうございます!」 氷空は嬉しそうに頭を下げ、とりあえず今日のところは帰ってもらった。
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