おそろいの抹茶ラテ

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「え?」  ドキッとした。私の表情はこわばった。 「オレの実家に同窓会のハガキ来てたよ」  彼の手がゆっくりとカップを持ち上げた。   「私はずっと実家に帰ってないから、知らなかった」 「そうなんだ。あんまり帰らないの?」 「うん、なんとなく足が遠のいちゃって」  私の目線は右上を見て、パチパチとまばたきをした。これは私自身の問題であって、神垣くんには関係ない。    「あ……わりぃ」  バイブ音と共に、申し訳なさそうにスーツのポケットからスマホを取り出した。 「いいよ、気にしないで」 「ごめん、ゆっくりしてって」  彼は残りのコーヒーを急いで飲んだ。そして、ほろ苦い香りを残して席を立った。 「あ、平岡、またね」 「バイバイ」  笑顔で手を振って見せた。大丈夫。ぎこちなくは、ない、はず。 「はい、お疲れ様です……はい……」  通話しながらカフェを出る背中を眺めていた。久しぶりに聞いた彼の声は、自動ドアが閉まると同時に聞こえなくなった。制服からスーツになった後ろ姿を感慨深く思いながら、そして目線をカップに戻した。  ――またね。  と言った彼の真意は分からない。ただ単に別れ間際の決まり文句なだけかもしれない。きっと深い意味はない。
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