おそろいの抹茶ラテ

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 出来たてのカフェラテは、熱くてまだ飲めそうにない。私はゆっくり歩きながら、空いている席を探した。夕方のカフェはだいたい混雑している。 「あれ、平岡?」  騒がしい店内で、聞き覚えのあるよく通る声に反応した。聞こえてきた方に顔を向ける。まさかとは思ったけど、そのまさかだった。  高校を卒業して八年、こんな街中にある有名チェーン店のカフェで、元クラスメイトの神垣くんにバッタリ会ってしまうとは。 「え、神垣くん?」 「え、マジか。久しぶり」  彼は一人でカウンター席にいた。当時は髪を短く刈っていたのに、センター分けで少し長めの前髪が彼を大人っぽく見せる。スーツ姿ではあるけれど、爽やかに笑いかけるその表情は高校の時と変わらない。その笑顔を見ると、懐かしい気持ちでいっぱいになると同時に、苦い思い出までこみ上げてしまう。 「良かったら、隣どうぞ」 「あ、ありがとう」  顔つきや仕草が少し大人になった。なんだか落ち着かない。カップを持つ袖口から腕時計がのぞいている。高校の時にずっと身につけていたG-SHOCKじゃなくなっていた。そりゃあそうだよね。だって八年だよ。もう何もかも違うに決まってる。
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