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羽を結う
☽︎︎·̩͙
それは、三日月が美しい夜だった。
わたしはとにかく逃げて逃げて、逃げていた。
闇に溶け込めるように、黒いキャップを深く被って必死に走る。
逃げ道など、どこにもなかった。
家には帰れない。
帰れば、いつ命を狙われるかわからない。
こうして逃げている間も、背後から狙われたら……と考えるだけで恐怖だった。
だからといって、何処へ向かっているのか自分でも全くわからなかった。
深夜1時を回った時間帯、人通りが少ないことだけに安堵した。
早く遠ざからないといけないと思うのに、もう足が使い物にならない。
泣きながら真っ暗な夜道を必死に駆けていた、そのときだった。
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