ひかる姫君へ

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七夕の夜、嵐山の竹林。昼の喧騒が嘘のようだ。星が煌く晩だった。 茅葺屋根の軒下でおじいんさんとおばあさんが仲良くお茶をすすっている。二人の願い事を書いた短冊が夜風に優しく揺れていた。 遠くの空にひときわ強い光りが見えてきた。 次第に近づいてくる。 カメだった。 背中に誰か乗っている。 だが、眩しくて良く見えない。 歌声が聴こえてきた。 豊かな響きが辺りを包み込んで行く。 「♫ ささのはさらさら のきばにゆれる  おほしさまキラキラ ねがいはかなう ごしきのたんざく わたしはよんだ  おほしさまキラキラ そらからみてる ♫」 カメが庭先に舞い降りた。 甲羅の上から懐かしい声がした。 「おじいさま。おばあさま。お久しぶりでございます」 同時に釣り竿を手にウラシマさんが立ち上がった。 「あっ。おとうさん。おかあさん。ただいま!」
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