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「そういえばさ、さっきのアレなんか良かったよね」
「アレ?」
私が水を一口飲むと、「ただいま、おかえりってやつ」と大貴が言った。
「確かに。一人暮らしだと滅多に『ただいま』って言わないからな。『行ってきます』も言わないし」
「俺も久々に『おかえり』って言ったもん」
大貴がお米を完食し、「おかわりしまーす」と言って炊飯器を開けた。大盛の米を片手に机に戻ってくる。
「確かに良いね。帰ってきて、『ただいま』って言える相手がいるの」
私はにっこりと笑った。すると大貴が動かしていた箸を止めて、皿の上に置いた。私は「どうした?」と大貴を見る。
「ならいっそ一緒に住んでみる?」
突然の提案だった。それはつまり同棲ということだろうか。確かに大貴とは付き合って今年で三年だ。お互いの年齢から考えて結婚も考えても良い時期だし、その為に同棲をするのも良いかもしれない。
「いいかもね、住むの」
「マジで?」
大貴の表情がパッと明るくなった。私はこくりと首を縦に振る。
「じゃあ、住むか」
大貴がスマートフォンをポケットから取り出すと、「実はもう良い物件があって」と物件紹介ページを開いた。何だこの用意周到さは、と私は思ったがツッコまないでおいた。私は楽しそうに話をする大貴に耳を傾けながら、彼が作ったハンバーグを口に運ぶ。幸せが充満した空間に、心がホッと温かくなる感触があった。
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