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―――それは、まるで呪いのよう。
ブラウン管に映るその様に戦慄した。
ピリピリとした空気感が肌を刺し、まるで目の前で本当に行われていると思ってしまうほどの緊張感と刺激的な視線に固唾を呑んでしまう。
そのくらい冥々で、陰鬱さを纏っている。
『あぁ、こわいこわい』
『おまえは、おれだといっておろうに』
『どうして、それを否定してしまうのだ』
長めの前髪から覗く黒曜石のような眸を縁取る長い睫毛が微かに伏せられる。それが美しく流れていくような自然体なものであるのに、今では恐怖をそそる要因でしかない。
簡単で、単純な台詞なのに、それを感じさせないくらいの勢いで迫る空気に呑まれる。自分という人間の武器を理解し、利用し、立ち回る姿を知っているからこそ、余計に画面に立つ姿に慄いてしまうのだ。
「それ、面白いのかよ」
「……っ、」
ぐらりと脳が揺さぶられた。
ぐちゃぐちゃに脳髄の奥まで掻き交ざられたみたいに、真っ白になる。思考が追いついていない私を置いていくかのように言葉を紡がれた。
「つまんねぇの、みてんなよ」
「つまんないのは、アンタの方なんじゃない」
「はっ倒すぞ」
泥臭さを感じさせない。
此奴の見せ方も、演技も全て洗練されてる。嫌に鼻に付かないのは、此奴が演じるもの全てに魅せられて、引き込まれてしまうからだ。
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