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ホテルから数分の距離にあるコンビニは、一般客やホテルの宿泊客と思われる客、そして同じように研修を受けていたと見られるスーツ姿の若者でにぎわっていた。
成美が入口の所に重ねてあるカゴをとろうと手を伸ばしたところで、それより先に隼人がそのカゴをとった。
「カゴはオレ持つから」
「私も持つよ? 重くなりそうだし」
「こういう時はかっこつけさせて。水野さんはカゴに入れてくだけでいいよ」
「じゃあ、かっこいい織田くんにお願いします」
お酒コーナ―の前に行くと、ホテルが近いからなのか、通常見かけるより多くのお酒が取り揃えてあり、成美は迷った。
「悩んでないで端から取ってカゴに入れてっちゃって」
「それでいいの?」
「いろんなのあった方が面白くない? 普段絶対飲みそうにないやつとか、こういう時じゃないとチャレンジする機会ないし」
「微妙だったらどうするの?」
「オレが飲む」
「お酒強いの?」
「まぁね。鍛えられたから。大学の時、サークルの先輩と無茶してよく飲んでたんだ。だからかなり強いよ。一升瓶くらいじゃ酔わないし、今まで記憶をなくしたこともない」
「それはすごいね」
成美は言われた通り、棚の端からお酒を取って隼人の持つカゴに入れていった。
お菓子やおつまみも選び、会計を済ませ、2人が店を出ようとしたタイミングで、数人の客が入って来た。
それをよけるため、少し端へ寄った成美は、3月にしてはめずらしいものを見つけた。
店の外に出てから、成美はそのことを隼人に言った。
「コンビニって何でもあるよね。まだ夏じゃないのに花火が置いてあった」
「好きなの?」
「随分とやってないなぁ、と思って」
「そう言われたらオレも長いことやってない。やる?」
「え? 今からじゃないよね?」
「そのつもりだけど? 戻って買ってこよう」
「ホテルにやるような場所ないし、みんな待ってるから急いで帰ろう」
「じゃあさ、夏になったらやろう」
「随分先の話だね」
「どう?」
成美が返事に戸惑っているのを見て、隼人は付け加えた。
「みんなで集まって。せっかく知り合えたんだから、ここで終わりとかもったいないよ。同期なんだし」
「そうだね。みんなで出来たらいいね」
「自動車ディーラーって周りが休んでる間に働くことになるけど、夏季休暇はやたら長いじゃん? みんなでコテージとか借りてバーベキューとか、近くに海があるとこだったら泳いだり、キャンプとかも……どう?」
「全部アウトドアだね」
「嫌い?」
「嫌いじゃない。好きな方かな」
「良かった! まずは夏が来たら、一番に花火をしよう! 約束」
「約束ね」
その後も、夏季休暇や年末年始の予定を話しながら、2人はホテルへ戻った。
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