一期一会

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ホームで電車を待つ間、成美は路線図を見て、隼人の降りる駅は成美の降りる駅の5つ先だということを知った。 「織田くんは一人暮らし?」 「オレ? 実家暮らし。水野さんは?」 「私は一人暮らし。大学でこっちに出てから今のところにずっと住んでる」 「就職で帰って来いとか言われなかった?」 「言われなかった。地元は田舎だから、そんなに就職先があるわけでもないしね。下に妹と弟がいるから親も寂しくないみたい」 「3人きょうだいの一番上なんだ」 「織田くんは?」 「姉貴がいるけど、結婚してもう家を出てる。たまに甥っ子連れて帰って来るんだけど、めちゃくちゃかわいい。下に弟がいたらあんな感じかな」 「それ、絶対違うと思うよ。わたしは弟とよくケンカしてたから」 「水野さんが? ちょっと想像つかない」 「しよーもないことでよくもめてた」 ホームに電車が到着するアナウンスが流れ、会話が中断する。 「電車来るみたいだね」 「あのさ、もうちょっと話さない?」 一瞬、成美の返事が遅れた。 「友達になれた記念。暇だったらだけど」 「そうだね。帰っても暇だし」 「水野さんの降りる駅の近くに何かいい店ある?」 「それだと織田くんが帰りに遠いよ」 「いや、オレは途中下車になるだけだから」 「2人の駅の中間の駅にしようよ。織田くんの降りる駅と私の降りる駅はちょど5つ離れてるから、真ん中のこの駅」 成美が路線図を指差す。 「ね? これなら帰り道が公平な気がする」 「わかった。じゃあそうしよう」
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