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夕食後、成美たちはラフな格好に着替えると、飲み会の場所となる部屋へ向かった。
「303号室って言ってたから、ここだね」
千智が大きくドアをノックすると、いきなりドアが開いて、目の前に背の高い男子が現れた。
「いきなり開けないでよぉ。びっくりしたじゃん」
千智はドアを開けてくれた男子のお腹をグーで軽くポンっと叩くと、中へ入って行った。
成美は「お邪魔します」と声をかけて、千智の後へ続いた。
部屋の作りは成美たちの部屋とベッドの配置まで全く同じで、備え付けのイスには女子が座っていて、ツインベッドの片方に男子が2人あぐらをかいて座っていた。
ベッドのそばに立っていた1人が成美に気が付き話しかけてきた。
「青木さんと同室の人だよね?」
「はい。水野といいます」
「僕は深津。他のメンツは……まぁ、本人に聞いて。ちょっと買い出しに行ってくるから」
「私も手伝いましょうか?」
「織田がいるから大丈夫だよ」
深津はにっこり笑うと、ドアの近くに立ったままでいた隼人を連れて部屋を出て行った。
深津と隼人が出て行くと、イスに座っていた女子が最初に名前を名乗った。
「わたしは武岡祐美。よろしく」
祐美はショートカットの似合うボーイッシュな美人で、上下とも有名なスポーツブランドのジャージを着ていたが、それがとても似合っていた。
「俺は阿部。こっちのガタイがいいのは――」
「横山です」
「青木でーす」
「知ってるって!」
阿部が合いの手のようなものを入れる。
「水野です。青木さんに誘ってもらいました」
「水野さんも営業職なの?」
質問してきたのは、祐美だった。
「はい。武岡さんもですよね?」
「わたしは、所属は一応営業だけど、こっちの横山くんと一緒でアスリート社員だから。ちなみにボールの方のバレーね」
「あー、オレはラグビー」
横山がそう言うと、千智がそれにいち早く反応した。
「横山くんって、ラグビーなんだ! どうりでガタイがいいと思った。じゃさ、もしかして青木憲正って知ってる?」
「え……青木って……もしかして?」
「青木憲正は、お兄ちゃんなんだよねー」
「うおっ、マジか! オレ、ずっとフアンなんだけど!」
「横山くんって、もしかして早稲日大?」
「何で知ってんの?」
「お兄ちゃんが、大学対抗戦見てて、褒めてたよ。早稲日の横山っていいじゃん、って」
「やば……どうしよ……青木さんって、オレの中で神なんだけど」
「やだなー、わたしら全然わかんないんだけど?」
祐美が笑いながらそう言うと、阿部がそれに応えた。
「しゃーない。俺らはバレーの話で盛り上がろうか? もちろん踊る方で!」
「いや、無理だし。水野さん、バレエやってたとか言うのなしだよ?」
「やってました」
「ホントに?」
「冗談です」
「そんな冗談言うタイプだったんだ!」
「わたしって、どんなふうに思われてたの?」
「真面目などっかのお嬢かと」
「真面目かどうかはわかんないけど、お嬢様でないことは確か」
「いやいや、水野さんにとっては『普通』でも、俺らにとっては『普通』じゃないかもしれないし」
「地元は山に囲まれた田んぼか畑ばかりのところで、父は農協に勤めてて、母は祖父母の農家を手伝ってます」
「田舎の人?」
「田舎の人です」
「なーんだぁ」
笑い声が上がったところで、ガチャッという音と共に、深津と織田が戻って来た。
既に盛り上がっている5人を見て、隼人は持っているビニール袋を持ち上げると言った。
「酒なしで盛り上がれるなら、これいらない?」
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