103人が本棚に入れています
本棚に追加
「それでは以上を持ちまして、研修は終了となります。ここで解散としますので、明日10時のチェックアウトは各自で行い、帰宅してください。皆さんと入社式で会うのを楽しみにしています。お疲れさまでした」
研修の最終日、夕食後に行われた解散式で、人事部長が挨拶を済ませ会場となっていた広間を出て行くと、誰かが「終わったー!」と声をあげた。
それが合図かのように、会場内は一気に騒がしくなる。
成美は会場の中で千智を探したが、なかなか見つからない。
そんな時、背の高い隼人が成美の視界に入った。
研修中、千智は深津と同じグループだったと言っていた。そして深津は隼人と仲が良い。もしかしたら一緒にいるかもしれないと思った成美は、隼人の方へ向かった。
思った通り、千智は隼人の隣で深津と話をしていたが、成美が近づくと、隼人がそれを千智に教えた。
「水野さん、ちょうど良かった! 今ね、深津くんたちとこれから集まろうって話してたとこだった」
「またこの前のメンバーで、打ち上げするんだけど、どう? 今回は一人予算2,000円くらい」
「水野さんも参加するよね?」
「お願いします」
「じゃあ決まり。コンビニに買い出し行って来るから、先に部屋に行って待ってて。武岡さんが先に行ってると思うから」
「前も深津くんに買いに行ってもらったし、手伝うよ?」
「何か出来ることがあったら言ってください」
「大丈夫。こいつがいるから」
深津が「こいつ」と呼んだのは隼人で、成美にペコっと頭をさげ、深津と一緒にエレベーターへ向かって行った。
千智が2人の後ろ姿を見ながら言った。
「深津くんって、大人っぽいよね~。それにリーダータイプ」
「わかる。でも恩着せがましくないっていうか、仕切ってる感がないね」
「さらっとまとめ役みたいな?」
「そう! そんな感じ」
「織田くんとも仲がいいみたい」
「同室だからじゃないの?」
「それ関係なく仲いい感じ。深津くんが織田くんの面倒見てて、あれはまるで兄弟だねー」
成美と千智が少し遅れてエレベーターへ向かっていると、先に行ったはずの深津がひとりで戻って来た。
「ごめん、悪いけど水野さん、織田と一緒に買い出し頼めない?」
「いいよ」
「どしたのー?」
「スマホどっかに忘れた」
「あ、じゃあわたしはそっち探すの手伝うよ」
「助かる」
「水野さん、後でね!」
「うん、後で」
広間へ戻る深津の後を千智はついて行った。
それを見て、成美はエレベーターの前に立っている隼斗に駆け寄った。
「織田くん、私が深津くんの代わりに行くことになったから」
最初のコメントを投稿しよう!