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はじめは無視してやり過ごそうとも思ったのだが、ここまでしつこいと近所で事故か重大事件でもあり、警察や消防が避難を呼びかけて廻っている可能性だってありうる。
「……はい。なんですか? こんな時間に?」
なおもピンポーン……ピンポーン……とチャイムを鳴らし続けるドアの向こうの訪問者に、不審感いっぱいの声で俺は恐る恐る尋ねた。
「…あ、やっと出てくれた! ただいま兄ちゃん。俺だよ俺。カワイイ弟のご帰宅だよ」
すると、厚いスチール製のドア越しにそんな軽快な言葉が返ってくる……なんてことはない。チャイムを鳴らしていたのは俺の弟だった。
「なんだ、おまえかよ……今、何時だと思ってんだ!? てか、なんでチャイム鳴らしてんだよ? 自分の鍵があんだろ? 鍵が!」
にしても、こんな真夜中にこいつはいったい何をやっているんだ? 時間も時間だが、チャイムなんか鳴らさずとも自分の合鍵で開けて入ってくればいいものを……。
「鍵なくしちゃったんだよ。だから家に入れなくて……なあ、早くここ開けてくれよお」
少々怒り気味に俺がその疑問をぶつけてみると、弟はそんな理由を簡潔に述べ、早く鍵を開けるよう再びせっついてくる。
「鍵なくしたって……おまえなあ、不用心だろ? それにこんな遅くまでどこで何してたんだよ?」
急かす弟に対し、ドアノブへ手を伸ばす代わりに腕を組むと、呆れた俺は溜息まじりに再度、質問をヤツにぶつける。
「飲み会だよ。今日は会社の飲み会があるって言ってあっただろ? なあ、そんなことよりも早くドア開けてくれよお」
会社の飲み会? そんな話聞いてただろうか……?
「飲み会にしたって、もう三時だぞ? 三次会までやってたのか? 明日も仕事あるだろうに……」
さらに文句を口にしながらチェーンキーを外そうとする俺だったが、その時ふと、大きな疑問が脳裏に浮かんでくる。
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