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「バレタノナラ、シカタナイ……サァ、ハヤクココヲアケロ! アケナイトブッコロスゾ!」
騙すのに失敗したとわかると一転。そいつは穏便に事を進めることを放棄し、ガシャンガシャン…と激しくドアノブを回しながら強引にドアをこじ開けようとする。
また口でも早く開けるよう脅してくるが、開けたら開けたで無事に済むわけがない……どっちにしろぶっ殺されるのだ。
突如として訪れた命の危機に、さぁー…と、全身の血の気が失せてゆくのを感じる。
「う、うわああああぁーっ…!」
俺は恥ずかしげもなく絶叫すると一目散にベッドへと駆け戻り、頭から布団の中へと飛び込む。
「…なんまんだぶ……なんまんだぶ……」
そして、ガタガタと震える身体を必死で抑えながら、目を固く瞑って念仏を口にする。
澄ませたくなくても耳を澄ませてみれば、玄関の方ではなおもガシャンガシャン…とドアノブが騒がしく鳴り続けている。
あれはどう見ても生身の人間ではないだろう……だとすれば、思い当たる節がないでもない。
じつは今夜…いや、日付変わったので昨夜か? 俺は友人達と一緒に自分の車で、ちょっと離れた所にある心霊スポットへ行っていた。
そこは廃村になった山間部の集落で、巷で囁かれているウワサによれば、他の住民とトラブルの絶えなかった素行の悪い一人の村人が、ある夜、相手の家族になりすまし、集落内の全戸で一家惨殺を繰り返したという、いわく因縁付きの場所だった。
ちなみにその犯人も凶行後に自ら命を絶ったと云われているが……まあ、あくまでウワサの範疇にすぎない。本当にそんな『八つ墓村』や津山三十人殺しのような、凄惨な大量殺人事件があったかどうかも定かではない。
だが、ウワサが真実か否かはともかくとして、その廃村では確かに奇妙な出来事が実際に起きた。
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