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ふと気がつくと、なんだか布団の外に仄かな明るさを感じる……それにチュンチュンと遠くで小鳥の鳴く声も微かに聞こえている……。
布団に丸まって必死に念仏を唱えている内に、いつしか夜が明けていたらしい……ガチャン、ガチャン鳴っていたドアノブも今は静かになっている……。
「ハァ……」
ゆっくりと布団から頭を出した俺は、周囲を見回して安堵の深い溜息を吐く。
念のため、玄関も見に行ってみたのだが、あの偽の〝弟〟もすっかりどこかへ姿を消し去っている……どうやら助かったみたいである。
だが、明るくなったので今は一時的に姿を消しているにすぎないかもしれない……また今夜、同じように現れる可能性は大である。
まだまだ油断はならない。俺は朝飯も食べずにネット検索をすると、最寄りのよく効くと評判の神社を探し出して速攻でお祓いに行った。
そのお祓いが功を奏したものか? それ以降、深夜に帰宅する偽の〝弟〟も、また他の怪現象が起こるようなこともまったくない。
それでもこれに懲りて、もう二度と心霊スポットなんかに行くものかと誓って暮らしていたある日の夕方……。
…ピンポーン……ピンポーン……と、玄関のチャイムが鳴り響いた。
ネットで買い物をしていたし、おそらくは頼んでいた荷物でも届いたのだろう。
あれからだいぶ月日も経ち、最初はトラウマだったチャイム音にも、最近ではようやく慣れてきている。
「はーい! 今行きまーす!」
俺は大声で返事をすると、急いで玄関へと向かう。
「どちらさまですか?」
それでも念のため、鍵を開ける前に尋ねてみたのだが……。
「ただいま兄ちゃん。俺だよ俺…」
ドアの向こう側からは、聞き慣れたそんな声が返ってきた──。
(帰宅 了)
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