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「このバーに来るのは、初めて?」
見かけない顔だと思った。火をつけ慣れているあたり、喫煙者だとも伺える。ちぐはぐな印象に、興味を唆られた。
「ええ。今日が初めてです」
「見たところ若そうね?学生さん?」
「そうです。成人はしてますけどね」
レンズの奥に秘めた、漆黒の双眸。その視線に囚われたら、どこまでも吸い込まれそうだと思った。
そんな彼は、顔色一つ変えずに注文したストレートのウィスキーを煽る。それから動作の隙間に垣間見えた数カ所のピアスホール。どこまでも意外性の持ち主だと知って、ますます惹かれてしまう。
「---ねぇ、君。この後時間ある?」
グラスを持つ、華奢でありながらも骨ばった手に自分も同じものを重ねる。
---久々に年下の男に、食指が動いた。
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