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仕事終わり。今日も体力労働と残業の山を超えて、そんな自分にご褒美としてお気に入りのバーでお酒を嗜んでいた。
勤務中はずっと縛っていた髪も、やっと呼吸ができるように解いてから。
カラン…と氷が衝突しあう音が、心地よくて酩酊する。
明日は土曜日。久々の、完全なる休日。基本的に職場から呼び出されることはないだろう、と安堵しつつ度数の高いお酒を浴びるように体内に流し込む。
仕事のストレスを発散させるように、煙草を一本取り出す。火をつけようとライターをいじってみるも、こんな時に限って燃料切れらしい。
ため息を吐いて、興味を無くしたように煙草から視線を外していると。
---不意に、指先の少し遠くから熱を感じた。
「---良ければ、どうぞ。勝手に付けさせてもらいましたけど」
いつの間にか、隣に客が座っていたようで。私の行動を見かねて、親切にも煙草に火を付けてくれたらしい。
その主を視界に入れて、…少しだけ驚く。
こんなバーとは無縁な、真面目で優等生の見目形をした黒髪の男。その顔には典型的な黒縁眼鏡がかけられている。
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