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玄関を出ると最大の功労者に声をかける。
「レモンよくやった。レモンの大活躍のおかげだよ」
僅か三十分の襲撃だった。
帰り道はゆっくりレモンと歩いた。雨は小降りになっていた。すっきりしたはずなのになんでだろう、涙が止まらない。
鬼退治なんて息巻いてたけど、私の心の中の鬼を退治するためだったのかな。本当は誰も恨みたくない……。
「ただい……」
家に着いて玄関の扉を開けると挨拶が終わらないうちに、お母さんの声が降ってきた。
「どこ行ってたの? 心配してたんだから」
菫さんは、「お帰り、一花。鬼退治に行ったって訊いたよ。退治できたの?」と笑って迎えてくれた。
「うん。できたみたい。話は後でするから。シャワー浴びる。この子も汚れちゃったから先に洗う。レモンが出たら身体を拭いてくれる? 菫さん待たせるけどごめんね」
私は玄関で靴下を脱ぎ、お母さんからタオルをもらって足を拭いてから、レモンを抱き上げて風呂場に直行した。
シャンプー嫌いのレモンは風呂場でも抵抗して大暴れをした。タフな相棒だ。
部屋に戻って着替えていると机の上のスマホから通知音が聞こえた。
お父さんからのラインのメッセージだ。
『一花、ごめん。それと、誕生日おめでとう』
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