好きなもの

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好きなもの

 私の大切なものを仕舞うハコ。  これにしよう。  可愛い大きな木製のハコを買ってきた。  一目惚れして即買い。  見た目はちょっとしたテーブルみたいな大きさ。  上になにかを載せるのにもちょうどいいし。  ここに私の『好きなもの』を集める。  ひとつ、またひとつ。  イチゴの匂いのする消しゴム。  これは小学生の時、隣の席のケン君がくれたやつ。お母さんが買ってきたけど、女っぽくて趣味じゃないんだって、なぜか無理やりくれたやつ。  あのチョコレートの入ってた空き箱。色が綺麗だしやっぱり捨てられない。  渡そうとしたけど渡せなくて、涙を流しながら自分で中身は食べた想いの詰まったチョコレートの空き箱。  表面にはハッピーバレンタインなんてこれ見よがしに描いてある。  結局自分にあげることになったバレンタインの苦い思い出。  それから。  感動した恋愛の本。  タイトルは『泣きたくなるような片想いの人が読む本』  なんてわたしにピッタリなんだろう、ってまた即買いしたやつ。  泣いて泣いて泣きまくった私の恋愛バイブルとの思い出。たくさんこれには慰められた。  どうにもならない片思いの自分とリンクして、涙が溢れて止まらなかった想い出の大切な本。  大好きな切ない片思いの曲たちのつまったCD。愛にまつわる曲ばかりを集めたオムニバスのCDは聴くとその時の感情が溢れ出す、思い出の曲たち。  一番大切な、初恋の想い出の…小学校の卒業アルバムと、スナップ写真。  あ、これ遠足の時の集合写真。懐かしい。  同じ班のケン君が隣にいるせいで顔が緊張してる。  こっちのスナップ写真。私が写ってないのに注文した。学校の壁に貼ってあって、番号で注文する奴。友達のミカに、見つかっちゃったから、言い訳したんだった。 『注文番号、間違えちゃった』って。  本当は間違ってなんか無い。そこに写ってるケン君の笑顔が、こっちをまっすぐ見つめてる。  きっと私になんかには見せないまっすぐな視線…。この写真だけは、ちゃんとわたしだけをまっすぐ見てくれる。  最後にケン君への手紙。渡そうとしたけど渡せなかった手紙。渡せずに今でもここに入ってる。その手紙はあの渡せなかったチョコレートの空き箱の中にそっと仕舞いこんだ。  なんだ…私の『好きなもの』全部、ケン君に関係するものばっかじゃん…。  私の思い出と、その物と、その想いを全部集めてそっと蓋をする…。
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